2025年8月19日(火)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.19を開催いたしました。

TALK EVENT

2025年8月19日(火)、大分にて第3回目となる交流会イベントが開催されました。今回のゲストには、独立からわずか2年で美容サロンを県内に9店舗展開し、更なる事業拡大をみせる「株式会社Juve.(ジュベ)」代表取締役社長の齋髙 将大氏です。

講演では、自身の独立から現在に至るまでの道のりとともに、ジュベが大切にしている価値観や組織形成における仕組み作りについて、実例を交えながら語られました。会場には、起業を目指す若者のほか、金融機関や行政・支援団体、企業関係者なども多く参加し、業種や立場を問わず、経営や組織づくりの学びがあった時間となりました。

イベントレポート

まず、冒頭に話されたのは、ジュベの企業理念である「あなた以上にあなたを思う」という言葉。この短い一文に、サービスや組織に対する姿勢がぎゅっと詰まっています。お客様に対しても、働く仲間に対しても、“本人が自身のことを思う以上にその人の未来や幸せを考える”という思いが、経営や人づくりの軸になっていると言います。

この考え方は「ミッション・ビジョン・バリュー(MVV)」として言語化されており、理念として掲げるだけでなく、スタッフの行動や考え方の指針となっています。

【株式会社Juve.のMVV】

・ミッション:「結果と過程にこだわれる人材育成」
結果を出すことももちろん大事。でも、その結果はどうやって生まれたのか、どんな環境やプロセスがあったのか。そういった“過程”にも価値を置くという姿勢です。

・ビジョン:「大分ナンバーワンの美容グループを目指す」
給与や休暇、生産性といった“はたらく環境”でトップを目指す。スタッフの暮らしそのものが豊かになることが、会社の成長にもつながるという考え方です。

・バリュー:「選ばれる喜びを知り、関わる人すべての可能性を広げる」
お客様に選ばれる経験は、スタッフの自信ややりがいにつながります。そうした前向きな循環が、社内外に広がっていくことを大切にしています。

理念は掲げるだけでなく、実際の行動や制度に反映されてこそ意味を持ちます。ジュベでは、採用や人材育成、店舗運営など、あらゆる場面でMVVが機能しています。

たとえば、採用においては、入社するスタッフと「なりたい自分」がジュベで実現できるかを徹底的に話し合っているそう。給与だけがモチベーションになってしまうと、組織の考え方との間にすれ違いが起きやすい。だからこそ、「自分はどうなりたいのか?」を言葉にし、その実現に向けたアクションを行っていくこと、またそれを会社として支援していくことをジュベでは大切にしています。

なかでも印象的だったのが、「役職ではなく”役割”で動く」という考え方。上下関係ではなく、必要な役割に対して自ら手を挙げる文化が根づいており、幹部ポジションも立候補制によって決定されるなど、スタッフ一人ひとりの主体性を尊重した組織が形成されています。責任ある仕事を自らが立候補し、担っていくことで、雇われて働くという意識ではなく、“自分たちで会社を創っていく”という感覚で仕事に取り組んでいるスタッフが多いとのことでした。

また、教育体制においてもユニークな取り組みがあります。たとえば「道徳の時間」と呼ばれる月1回の社内ディスカッションでは、仕事観や価値観を語り合う機会を設けているそうです。これにより、技術面の育成だけでなく、土台となる人間力やチームワークが自然と醸成されていくとのことでした。

美容業界では今もなお、長時間労働や上下関係の厳しさといった、昔ながらの働き方が根強く残っていると言われています。そのようななかで、ジュベは組織として“現代的なアップデート”を重ねながら、働く環境そのものを魅力あるものに変えているという印象を受けました。その結果が、離職率ゼロという結果にも現れているのだと言えます。

マーケティングの話においても興味深い考え方がありました。ジュベではまず運営している店舗ごとにその店舗の「ペルソナ」を設定し、誰にどんな価値を届けたいのかを明確にします。実際に、白髪に特化した「GBG」、ショートカットが得意な「juve.中央町店」など、各店舗それぞれの特徴を「ペルソナ」を設定して打ち出しています。
そのうえで、スタイリスト個人が、それぞれ自分の顧客になって欲しいユーザー像を決めてSNSを運用しているそうです。スタイリストが自身のSNS運用において陥りがちな「誰に向けて発信しているのかわからない」という状況をなくし、自分の得意とする技術や世界観を自覚し、積極的に発信していけるようになることで、スタイリストを指名してくれるお客様が増え、スタイリスト自身も自信が持てるようになると言います。

講演後の質疑応答でも、多くの質問が飛び交いました。組織づくり、キャリア支援、店舗展開、資金繰り、教育の仕組みなど、齋髙さん自身が経験された話を元に意見交換が行われ、参加者からは「業種は違っても学びが多い」「自社の制度づくりの参考になった」といった声が上がっていました。

26歳の若手経営者による講演でしたが、その中身は驚くほど実践的で、等身大でありながらも前向きなエネルギーにあふれていました。経営の考え方に正解はなく、「関わる人の幸せを、本気で考え抜くこと」が未来をつくるというメッセージは、業種や立場にかかわらず、経営の本質を語っているのではないでしょうか。

参加者との質疑応答の様子