2025年6月25日(水)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.17を開催いたしました。

TALK EVENT

2025年度最初となる会は、TKP新橋汐留カンファレンスセンターを会場に東京にて開催されました。ゲストに、Dr.JOY株式会社 代表取締役社長/医師である石松 宏章氏を迎え、「ーすべての医療従事者に、次の一手をー 医療業界におけるDX」をテーマにお話しいただきました。

イベントレポート

今回の講演では、医療業界のDXだけでなく、石松氏自身が起業を通じて学んだ経営者として大切にしていることについてお話しいただきました。

大分で生まれ育ち、父や祖父も医師という家庭に生まれた石松氏は、高校卒業後に上京して医学を学びました。医学生時代には学生医療支援団体「NGO-GRAPHIS-」を立ち上げ、リーダーとして活動を牽引。カンボジアの無医村に小学校と診療所を建設した経験を振り返り、寄付だけでは課題を継続的に解決できないことを痛感したと語ります。この経験から「自ら事業を立ち上げ、継続的に取り組んでいくこと」の重要性を感じ、これが起業を決意する大きなきっかけになったといいます。

石松氏は、創業当初、当時医師として働いていた現場の経験から、患者さんと家族をつなぐ情報共有サービス「famishare(ファミシェア)」を開発しました。病院宿舎に住み込み開発を行ったが、ただでさえ忙しい医療現場の業務に加え、患者さんの家族へ向けた情報を共有していく仕組みは定着しなかったそう。

その後、訪問診療を行うなかで地域の病院や薬剤師さんなど医療従事者間の情報連携がアナログで行われている現状に着目。「医療従事者同士で情報をセキュアに共有できるサービスが必要ではないか」と考え、現場の日常業務をDX化するサービス開発に取り組みました。こうして誕生したのが、会社名でもある「Dr.JOY」です。Dr.JOYは勤怠管理から医薬品情報、AI電話による業務効率化まで多様な機能を持つコミュニケーションインフラとして、医療従事者の働き方を改善するツールを次々に投入。3,600を超える医療現場で利用されるサービスにまで発展し、医療従事者の負担軽減に役立っています。

このサービスが浸透する創業初期は、病院ごとに10人を派遣して現場で使い方のレクチャーなどを行うことを大切にしていたそう。現場で直接顧客をサポートすることで改善点を把握し、スピード感を持ってサービスに反映させていったことが、顧客にサービスを浸透できた要因であるとお話しされました。

また、起業から会社として急成長を遂げていく過程で発生する組織課題についても言及しました。営業と開発の対立や社内コミュニケーションの齟齬など、さまざまな問題が発生し、組織崩壊を経験したことを明かしてくださいました。石松氏は「スタートアップでは、組織の問題に必ず直面する。その時に大事なのは、原因を特定し、常に解決策を模索しながら進めていくこと」が重要だということでした。そのために書籍やchatGPTを活用しながら解決策を見出してきたといいます。

特にオフショア開発については、ベトナムのエンジニアに日本の医療現場でサービスがどのように活用されているかを伝え、自分たちの仕事が医療に貢献していることを理解してもらうようにしているそうです。石松氏は、「仲間に誇りを持ってもらう仕組みを作るのもリーダーの仕事」と語り、組織の文化づくりを大切にされていることがうかがえました。

講演の最後に、石松氏は「起業家、経営者として挑戦を続けること」「自ら現場の一次情報を取りに行き、現場感覚を持ち続けること」「自分の考えをわかりやすくストーリーとして伝えていくことで仲間を巻き込んでいく力が大切」「社会的意義のある事業で共感を得ること」「最後までやり切ること」の重要性を挙げ、これから挑戦を続ける経営者たちに向けて自身の経験を踏まえたメッセージを送り、講演を締めくくりました。

参加者との質疑応答の様子