2025年3月4日(火)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.16を開催いたしました。
TALK EVENT

2024年度、全9回をとおして人と人の出会いを創造してきた『Connnect for oita ventures』。今年度最後、10回目のプログラムは、GROWTHⅠ(福岡市中央区大名)を会場に、大分県内の起業家と、出資や協業を検討している県外企業をつなぐピッチ&フィードバック形式で実施しました。

イベントレポート
2024年度、全9回をとおして人と人の出会いを創造してきた『Connnect for oita ventures』。今年度最後、10回目のプログラムは、GROWTHⅠ(福岡市中央区大名)を会場に、大分県内の起業家と、出資や協業を検討している県外企業をつなぐピッチ&フィードバック形式で実施しました。
大分からは、5人(5企業)がピッチに登壇しました。
・株式会社FUFU 代表取締役・奈須 敬司氏
・アップソイルカンパニー株式会社 代表取締役社長・中原 ひとみ氏
・株式会社MGワークス 代表取締役・松田 純也氏
・Lost Item Delivery株式会社 代表取締役・吉永 陽介氏
・株式会社ハイドロネクスト 取締役・森迫 和宣氏
福岡でスタートアップ支援や事業投資に携わる企業として、以下の皆さんにゲストとしてお越しいただきました。
・イジゲングループ株式会社 代表取締役専務CFO・鍋島 佑輔氏
・ベータ・ベンチャーキャピタル株式会社 代表取締役パートナー・林 龍平氏
・株式会社NCBベンチャーキャピタル マネージャー・井土 裕章氏
株式会社FUFU 代表取締役・奈須 敬司氏
長年不動産業に携わる中で、一般的にあまり知られていない「不公平な取引」が存在することに疑問を感じていました。不動産取引の透明性と公平性を向上させ、新たな革命を起こすべく、2019年に『株式会社FUFU』を設立しました。
不公平な取引が起きてしまう要因として、不動産会社による仲介があります。不動産売買の際は不動産会社が仲介に入ることが一般的な方法ですが、これによって、売主と買主はお互いの情報を全て知ることはできません。海外では禁止されている両手取引(一社で売主と買主の両方と取引すること)が日本では禁止されておらず、法的にも明確な情報提示義務はないため、違法ではありません。

この問題を解決するために誕生したのが、売主と買主をつなぐ不動産情報のプラットフォームです。高く売りたい売主と、良い不動産を求める買主が直接つながることで有意義な情報交換を実現。その後、不動産会社が専門的な視点からサポートに入り、取引の安全性も確保します。不動産会社にとっては、営業コストがかからない分、仲介手数料を一般的な料金の約半額におさえることに成功しました。オンラインプラットフォームを活用することで業務負担も軽減できます。
一生に一度の大きな買い物といわれる高額な不動産取引ですから、誰もが信頼できる不動産会社に依頼したいと思うはずです。当社では不動産会社のクチコミを可視化することで、顧客自身が納得して選択できるようにしています。不動産会社の本来の役割である「安全性、透明性、信頼性を法律や専⾨的な知⾒をもとに担保すること」を実現しできるこのシステムを全国へ広げて、ユーザーの不利をなくしたいと考えています。
(ゲストからの質問、コメント)
・ これまで不動産業に携わってきた奈須さんだからこそできたビジネス。「仲介」というビジネスモデル自体の変革が必要なのだと感じました。
・ 売手、買手それぞれに対する手数料のシステムについて教えてください。
・ これまでの不動産売買の常識とは異なり、いわゆるCtoC(個人間取引)の部分も多いビジネスのように感じますが、お客様からはどんな声がありますか?
・ 内見から成約につながっている率が高いという点が興味深いです。一般的には内見しながらその場で売手に住み心地などを聞くことが多いですが、このシステムならいろんな情報を事前に知ったうえで納得した状態で内見に行くから、成約率が高くなるのだと思いました。

アップソイルカンパニー株式会社 代表取締役社長・中原 ひとみ氏
環境課題とされている「土」の廃棄方法。昔は土を還せる庭がありましたが、住環境の変化によって「土を捨てたい」という新しいニーズが生まれています。しかし自然物がゆえ、土は廃棄物として処理ができずに困っている人も少なくありません。この現状を身を持って体験した中原氏は、「土の100%リサイクル」を実現するために、誰もが参加しやすいプラットフォーム『アップソイルカンパニー株式会社』を立ち上げました。
試行錯誤の末に2つの商品を開発。ひとつは別府温泉の蒸気を活用した「Circular Soil(サーキュラーソイル)」です。回収した土を別府温泉の蒸気で消毒するので、地球にやさしいリサイクルを実現する商品でもあります。ふたつ目は、「Up Soil(アップソイル)」です。古い土に混ぜるとよみがえる土の再生材で、土を捨てることなく使い続けられる環境保護商品です。

メディアで紹介され全国から注文がありましたが、送料の問題から「身近な店で買えればうれしい」という声が多数あり、販路拡大が目下の課題です。また、古い土の回収スポットは県内に10ヵ所ありますが、県外にはまだありません。回収インフラを構築するために、古い土を宅配便で送れる「回収キッド」をネット販売しています。その発展形として、土の回収と受け取りを同時にできるサブスクリプションの「土のシェアリングサービス」をスタートする予定。土は安価なため、黒字化を目指すには量が必要ですが、土の循環に参加してくれるホームセンターや園芸店などの参画企業を増やしたり、新たな工場設置による輸送コストを削減したりと、課題を解決しながらマネタイズを生み、土のリサイクルが当たり前の社会づくりを目指します。
(ゲストからの質問、コメント)
・ 社会課題に着目し、それを地元が持つポテンシャルである温泉を活用して取り組んでいくという構想が素晴らしいと思います。
・ マネタイズするためには協力者となる連携先や仲間を増やしていく必要があると思います。理想として挙げていた大手ホームセンターは関東にしかない店舗ですが、実際にアプローチはされていますか?
・ 輸送コストがかかるのに、製造工場のひとつが遠方にある理由は?
・ 送料はひとつのネック。解決するモデルをこれから確立していければ、ビジネスとして成長できると思います。
・ 別府の温泉でなければならない理由とは?
株式会社MGワークス 代表取締役・松田 純也氏
産業機械用設備「減速機」のオーバーホール(再生)事業を行なっています。エネルギー産業、航空・宇宙産業、建設・エンジニアリング業など、多種多様な分野で使われている減速機ですが、長い年月をかけてゆっくりと壊れるという特性を持っています。故障してしまってもすでに生産中止になっていることも珍しくなく、新品に買い替えるにも大型の減速機だと2000万円を超えるものもあり、さらに納品にも長い時間がかかるというのが現実です。
減速機が故障したからといって、現場はストップできません。そんな現状を解決するために、減速機のオーバーホールに特化した事業を展開。減速機を預かって解体し、部品を調査して、必要に応じて同等部品を再現・製作します。機械の内部清掃や消耗品の交換、動作確認などをワンストップで受け負うことができるため、大幅なコストダウンが可能。さらに新品同様のものを最短で戻せるサステナブルな事業でもあります。

全国に2社しかないニッチな事業で、高い技術と知識をもっていなければできない唯一無二のサービスは、ものづくりに関する特殊な技術と高い知識を持つ同社の人材によって成り立っています。また、地場企業40社との連携による万全の体制で多彩なニーズに対応しており、事業立ち上げから3期目で売上2.4億円を達成しました。プラント工場の多くが設備の老朽化が進んでいることもあり、ニーズはさらに高まっていくことが予想されます。工場停止ゼロの世界を実現するために、ものづくりのまち大分を確立させ、地場でバリューチェーンを構築しながら、『未来のものづくり工場の変革』を実践していきます。
(ゲストからの質問、コメント)
・ 全国でも2社しかない非常にニッチな事業ということですが、他社ではできない(御社にしかできない)理由とは?
・ さらに生産性をあげるために必要なこととは?
・ この事業は職人的な技術力が必要な印象を持ちました。専門性が求められる人材の育成についてはどのように考えていますか?
・ IoTの導入でさらに稼げる仕組みがつくれれば、さらに展開が見込めそう。
・ 新たに機器を購入するよりも費用が非常に安く済み、工場にとっては大変うれしいこと。御社の収益を考えるともっと金額を上げてもいいように思うが、価格設定の根拠は?

Lost Item Delivery株式会社 代表取締役・吉永 陽介氏
年間1000万個にものぼる訪日外国人の忘れ物。持ち主へ返却するのは容易ではなく、宿泊施設の業務を圧迫しています。元ホテルマンで、その後海外への輸出入事業を手がけていた経験から、これらの経験をいかせば問題解決できるのではないかと思い、2020年に創業。“コストゼロ、リスクゼロ”で忘れ物問題を解決しています。
サービスは2つ。ひとつは宿泊施設(法人)向けの忘れ物代行配送『ワスラック』。もうひとつは訪日外国人(個人)向けの『落し物の捜索代行日本遺失物捜索隊』です。どちらも共通する課題は言語です。また訪日外国人は、落とし物をしたときの問い合わせ先がわからない、帰国後だと引き取る方法がないという課題もありました。
宿泊施設側としては、人員不足の中で行う複雑な海外配送業務は大きな負担です。海外には着払いシステムがなく、また国のルールを知らずに配送してしまうと、ものによっては罰金や没収といったペナルティが課されることも。これらのリスクをはじめ、忘れ物をした人とのやりとりから梱包、保険書類の作成、追跡調査、破損や紛失した場合の対応まで全て代行し、料金は忘れ物をした人から受け取ります。バスやタクシー、空港、サービスエリアなどさまざまな場所で利用できます。

捜索代行は当初成果報酬にしていましたが、捜索費を有料化したことで発見率の高い依頼しかこなくなり、結果的に発見率が81%にまで増加しました。
目指すのは、宿泊施設、ゲスト、地域を忘れ物でつなぎ、訪日外国人であふれるまちづくり。忘れ物を届ける際に、地方の楽しみ方をまとめたダイレクトメッセージを荷物に同封したり、地方の魅力を写真やデザインで表現して印刷した段ボール(地域パッケージ)に入れて送ったりという手法で再来日や観光客誘致を、観光立国の一翼を担っていきます。
(ゲストからの質問、コメント)
・ 「お金を払ってでも見つけたい」という考え方は、日本人にはない感覚かもしれないと新鮮でした。
・ 例えばホテルに忘れ物をした場合、実際にどういった価格設定をしているんですか?
・ ホテルと提携しているということですが、提携していないところで落とし物をした場合はどういう流れで御社に依頼がくるんですか?
・ 落とし物をした本人がワスラックにたどり着くまではどんな経緯をたどるんですか?
株式会社ハイドロネクスト 取締役・森迫 和宣氏
日本国内では現在、200万トンの水素が使われています。日本政府では、2050年までに水素年間導入量を現在の10倍(2000万トン)に増やすという目標を掲げています。急激な需要増に対応するためには、持続可能で安定した水素生産と供給の仕組みが必要です。
『水素の持つ無限の可能性で、世界を変える』をビジョンに掲げ、当社の新技術「バナジウム水素精製技術」によって社会課題解決に取り組んでいます。水素を生成する場合、高価な“パラジウム”という物質を使いますが、当社の新技術では安価で埋蔵量も多い“バナジウム”を採用。需要の増加に対応できるのはもちろん、環境負荷の軽減にもつながります。
2050年、日本における水素導入量は4.4兆円という試算があり、成長が期待できるマーケットです。当社では産業用水素需要に的を絞り、4.4兆円のうち2.8億円規模のシェア獲得を目標に、商社やガス分析会社、エンジニアリング会社と連携して目標達成を目指しています。

事業モデルのひとつが、廃棄されていた水素の再利用です。工業炉で出る使用済み水素は、排ガスを含むためそのまま廃棄されていますが、その排ガスを回収して水素を再利用しています。
もうひとつが、バイオマス資源などから発生する未利用ガスからの水素の回収です。これまで廃棄されていたエネルギーを活用することができます。導入実証実験はすでに進んでいて、システムの導入に向けた相談から導入までサポートできるコンサルティングの仕組みも確立しています。2029年のIPOを目標に、プロダクトのさらなるスケールアップを目指しています。
(ゲストからの質問、コメント)
・ スケールアップを目指すうえでは資金調達や運用の面が大きな課題になりそうですが、どのような計画を考えていますか?
・ 連携先がさまざまありますが、業界ごとでコンサルティング手法の違いや、実際にコンサルティングに入ってみて知った現場の声などはありますか?
・ とても属人的な仕組みに感じましたが、さらなる事業拡大に向けて何が必要だと考えていますか?
最後に
日常で何気なく感じていた小さな疑問を地域や社会の課題ととらえ、それをビジネスとして変換していったさまざまなスタートアップの事例を知ることができる貴重な時間となりました。ゲストからの質問や感想は支援側がどんなところに着目しているかがわかり、これから起業やスケールアップを考えている参加者にとっては押さえておくべきポイントとしてヒントになったはずです。
大分県ではこれからも、さまざまなチャレンジを後押しする土壌づくりを実行していきます。
