2024年12月9日(月)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.13を開催いたしました。
TALK EVENT
2024年12月9日は、レンブラントホテル大分(大分市田室町)にて開催。『大分ITネットワーク社会研究会』との共同講演会として、株式会社ストライク代表取締役社長の荒井邦彦氏にお越しいただき、『地域創生とM&A』のテーマでお話をいただきました。
イベントレポート
1997年に創業した株式会社ストライクは、事業継承やM&Aを支援する会社。公認会計士としての業務の中で、担当企業がM&Aに取り組みはじめたことが起業のきっかけだったそうです。「公認会計士としてサポートできる役割は限られています。一歩踏み出して、取引をつくる側にまわってみたいと思うようになりました」と、27歳の時に起業しました。
本講演のテーマ『地方創生とM&A』について、冒頭で「一見結びつかなそうな2つのキーワードですが、実は密接に結びついているんです」と述べた荒井氏。どの地域にも優れた会社は必ずあるのに、さまざまな要因でその存続が難しくなっているのが現実だといいます。これにより人口が流出し、地方衰退へとつながってしまうケースも。そこで注目されているのが、M&Aです。
企業の存続が困難になる要因として挙げたのが、『中小企業は日本の宝』というこれまでの考え方が変化せざるを得ない時代の流れ。そのひとつが少子高齢化です。アトツギ問題に直面する企業も増え、「規模は小さくてもいい」という考え方では存続自体が立ち行かなくなってきているといい、「中核となる企業がM&Aを進めていかないと、地域が疲弊してしまいます」と荒井氏は危惧しています。たとえ経営が落ち込んでも、中小企業は尊いものであり、後世に残さなければならない―。そんな考え方が広がった結果、生産性の低下を招いているのではないかと話します。
「これからは、“中小企業は中堅企業を目指す”“中堅企業は大企業を目指す”の時代です」と話す荒井氏は、産業競争力強化法が改正され、“中堅企業”という分類が創設されたことを紹介。成長したときに大きな経済効果をもたらす中堅企業が、M&Aによって高成長することに期待したいと話します。M&Aに対する補助金や優遇税制についても紹介しながら、「事業規模に合わせて使える税制があります。平等に与えられている権利を使うか使わないかは経営者次第と」と参加者へ伝えました。
株式会社ストライクがサポートしてきた事例として、老舗喫茶店、プロバスケットボールチーム、テレビ局、建設コンサルタントなど、いずれも地方に拠点を置く事業がM&Aによってどう変化したかを紹介。事業継承、経営難、構造改革、成長戦略と、M&Aに踏み切るきっかけになった課題はさまざまですが、いずれにも共通していたのが、M&Aによって経営の安定・向上に成功しただけではなく、地域活性につながっているということです。地域のにぎわいをつくったり、雇用が生まれたりと、地方企業が地域創生の一翼を担う存在へと成長を遂げています。
「たとえ斜陽産業であっても、M&Aによって成長できるというのが持論です」と荒井氏の言葉にもあるように、実はどんな業種かはさほど関係がないと考えているそうです。大切なのは、所有者が変わった後に、しっかり会社の価値を上げること。「買い手企業は、売り手がどれだけ悩み抜いて意思決定したかをしっかり理解することで、結果が出る良いM&Aにつながるはずです」(荒井氏)。
かつてはマイナスイメージを持つ人も少なくなかったM&A。現代では、事業継承や自社の事業発展のためにと、プラスの戦略として認識されていることから、「譲受側(買い手)は、自社にこういう事業がほしいと積極的に発信するべき。買い手が選ばれる時代になり、良い会社ほど買い手を選んでいます」(荒井氏)と、ビジネス手法のひとつとしてM&Aはさらに活発になっていきそうです。
荒井氏が繰り返し伝えたのは、「買収するリスクより、“買収しないリスク”を考えてほしい」という言葉です。経営者にとって容易な判断ではありませんが、自社が買わなければ他が買う…というめまぐるしく変化する現代ビジネスの世界で波に乗り、成長を止めない企業へ発展するためには、思い切った決断も必要なのかもしれません。
「大分を代表する企業のみなさんにどんどん会社を買っていただき、自社の成長や地方創生をすすめてほしい」という荒井氏の言葉を受け、少子高齢化、人口減少、アトツギ問題など、地域が抱える課題を改善するために、M&Aが手段のひとつになり得ると理解した参加者たち。時にチャレンジングな攻めの姿勢も大切にしながら、地域の未来を支える企業が大分からたくさん生まれることを期待したいです。