2024年11月22日(金)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.12を開催いたしました。

TALK EVENT

2024年11月22日は、H coffee&work(大分市荷揚町)を会場に開催。豊後高田市にある株式会社ワンチャー代表取締役の岡垣太造さんを講師にお招きし、『永遠の富と美を備えた幸せ―匠の技、大分から世界へ―』をテーマにお話いただきました。

イベントレポート

2011年に設立した『株式会社ワンチャー』は豊後高田市に会社を構え、万年筆や腕時計を製造・販売する企業です。2019年には、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に選出、2021年にはForbes JAPANの「SMALL GIANTS AWARD」を受賞するなど、地方の小さな企業が日本、世界から注目を集めています。

“実用性とアートを融合した製品づくり”をテーマに自社製品を開発している同社。アイテムを通じて日本の伝統工芸の継承と発展も目指すビジネスの特徴は、日本の職人が持つ高い技術力に、外国人留学生の視点を取り入れる手法です。

社員の約8割が外国人材で、社内での公用語は英語。「英語だからこそ、よりオープンなコミュニケーションがとれている気がします」と岡垣氏。一人ひとりが意見を持ち、その考えを尊重し合えるフラットな関係性。さらには、外国人ならではの視点が入ることで、日本の伝統工芸の価値を再発見できるのだといいます。

「日本のものづくりのすばらしさ」をどう周知するか―。外国人スタッフの意見で採用したのがクラウドファンディングでした。万年筆のフラッグシップモデル『夢万年筆』は、わずか3日間で3000万円を集めたといいます。岡垣氏が思ってもみなかった手段でしたが、「日本の商品は必ず売れる」という外国人スタッフの意見が結果としてあらわれました。

同社の商品は、万年筆に七宝焼や輪島塗、蒔絵などの伝統工芸を組み合わせた、職人による手仕事が見える“一点もの”ばかり。「実用性と伝統を組み合わせ、新たな付加価値を生みだす」というありそうでなかったアイデアは、フランスの文化からヒントを得たのだそうです。

さまざまな国の芸術文化が集まるフランスでは、伝統や文化がミックスされることで新たなフランス文化として確立され、価値として高まります。そしてヴィンテージやアンティーク品として、その価値が時代をこえても変わらないのが特徴。「“買ってよかった”に変える作業こそ大切なんです」と岡垣氏がいうように、後世にわたって価値ある逸品であり続けることにも大きな意味を持つからこそ、妥協のない商品づくりを実践しています。

日本の伝統工芸のすばらしさや職人たちの技術力を発信するために、ブランディングに一層力を入れるように。海外からの評価をさらに高めながら、日本国内での販売数も徐々に高まっているそうです。「逆輸入できる時代が来ると、2年前に外国人スタッフが言っていたことが本当になりました」(岡垣氏)。

社員それぞれが当事者意識を持っていることも同社の強みです。例えば海外の商談会では、その地域出身のスタッフが先頭に立ち、日本との文化の違いをとらえながら最適なマーケティング手法を実践。グローバルな人材力によって、“刺さる”マーケティングを実現させていることも、世界中にファンを増やしている理由のひとつです。

製品を通じて伝統工芸を知るきっかけにもつながり、職人への依頼が増えることも。「後継者不足などを理由に途絶えてしまいそうな伝統文化に、多少なりとも寄与できているのではないかと思っています」と、企業ミッションを果たしながら社会へ貢献。外国人スタッフが自国に戻って販売代理店となるケースも増え、世界中で『ワンチャー』の名前が広がりつつあります。

豊後高田市内の子どもたちに向けたビジネスに関する授業や、万年筆で書く楽しさを伝える特別授業、インターンの受け入れなどを積極的に行うことで、「田舎からでも、世界に発信できるビジネスができることを知ってほしい」と話す岡垣氏は、「今まで考えもしなかったマーケット、想像もしなかったマーケットを探していきたい」とさらなる市場拡大によって、日本の伝統文化継承を目指しています。

ニッチな市場でありながら、設立当初から世界を見据えたビジネスモデルは、地方企業にとって新たな可能性を感じられる魅力的な事例でした。インターネットで全国・世界がつながる時代において、「地方だから」、「規模が小さいから」はマイナスではなく、「小規模だからできるこだわり」を大切にし、上手に発信できれば、世界から注目を集めることも不可能ではないと感じられました。

参加者との質疑応答の様子