2024年10月24日(木)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.11を開催いたしました。
TALK EVENT
2024年10月24日は、H coffee&work(大分市荷揚町)にて開催。ことでんグループ代表・HOXIN代表の真鍋康正氏にご登壇いただき、『公共交通から地方社会の未来を考える』をテーマにお話いただきました。
イベントレポート
真鍋氏が代表を務める『ことでん』は、電気鉄道、路線バス、高速バス、タクシー、レンタカーなど、地域の交通インフラを担うグループ会社。実は22年前に一度倒産し、真鍋氏のお父様が事業を引き継ぎました。
東京の大学へ進学し、経営コンサルティング会社で働いていた真鍋さん。お父様からの「ことでん再生をやってみたい」という思いもしなかった電話を受けた際は、「人口減少が進む地方で、ローカル鉄道の経営がうまくいくはずがない、と後ろ向きでした」と振り返りますが、当時60歳のお父様の、「最後に地域へ奉仕したい」という強い思いは感じたそうです。
2008年のリーマンショックを機に、社会を取り巻く環境の変化を感じたという真鍋氏。結婚し、子どもが生まれてからは待機児童の問題もあり、東京で子育てすることの大変さを実感。家族の将来も考えたうえで、“望んでいなかった”地元へ戻ることを決意したのが2009年のことです。
高校時代にことでんで通学していた時期があったそうですが、「印象があまり良くなくて…自転車通学に切り替えました」と決して良い思い出のない地元のローカル鉄道。父親のもとでグループ再生に携わってみると、倒産した理由がありありと見えてきたそうです。
公共交通機関は、地域の人の“日常の足”としてなくてはならない存在。「だからこそ、経営が厳しくなれば、スポンサーや行政、第三セクターなど誰かが手を差し伸べる。一般的に考えれば、地方鉄道は倒産しないはずなんです」と真鍋氏。それが実現しなかった理由のひとつとして、「地元の人に愛される企業ではなかった」と分析します。
「鉄道は必要だけど、“ことでん”は必要ない」。そんな厳しい声が聞こえる中、愛される企業へと成長させるための挑戦をスタートさせました。
企業再生、再生2代目、アトツギと、さまざまな側面を持つ真鍋氏ならではの広い視野で仕掛けた『ことでん再生計画』。大前提として、公共交通は『誰もが、安く、毎日当たり前に使えるもの』である必要があります。公共性が高いものゆえ、値上げなどの大きな改革は現実的に不可能。沿線人口の減少、働く人材不足といった外的要因も多い鉄道業界は、「動かせるバロメーターが少ない商売」だと痛感したそうです。
『愛される企業へ』の取り組みとして、マスコットキャラクター“ことちゃん”の誕生や、ラッピング鉄道を走らせるなど、生まれ変わった企業を周知する活動を地道に続けた結果、メディア取材が増加。注目度が増し、徐々にイメージアップにつながっていきました。
また、以前ご自身が利用者だったときに感じていた「対応の悪さ」の理由として、利用客との対話がない会社だったと感じた真鍋さん。会社に寄せられた全ての意見をSNSで公開し、質問と回答をWEBや駅で発信。この取り組みによって、「意見を言えば応えてくれる会社」というイメージへと変化させることに成功しましたが、10年かかったそうです。
「地方公共交通は赤字のところも多い。人口減少も進み、イチ企業が努力してもどうしようもできない時代です」。誰でも平等に移動できる社会を実現するためには、地方の公共交通は地域みんなで守らなければならないと問題提起する真鍋氏。そのためには、公共交通の価値をしっかり伝える活動を続けていきながら、「行政と一緒に、公共交通とは何かを改めて議論して深めていく必要があります」と投げかけました。
子ども、高齢者、障がい者をはじめ、車を運転できない人が好きな場所へ移動する手段として必要不可欠な公共交通。さらに、車の利用が減少することによる二酸化炭素排出量削減、最寄りの駅やバス停から歩くことで健康増進につながり健康保険料を削減、子どもたちの自由な移動をサポートし、親の送迎が難しい場合も公共交通機関を使えば習いごとの幅が広がり、教育格差が減少するなど、地方の未来は公共交通機関によって可能性を大きく広げられると考えています。
今回のお話を聞いて、人口流出、人材不足、少子高齢化による人口減少など、地方が抱える課題と公共交通は共通点が多いことに気付かされました。「交通はあくまでも手段であり、使う人がいなければ成り立ちません。そのためには、行きたいと思える目的地があることも必要。つまり、地域がにぎわっていることも大切なんです」と真鍋氏が話すように、地方の未来を創造するためには、そこに住む全ての人が当事者意識を持って取り組まなければいけない時代がすでに訪れています。