2024年9月17日(火)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.10を開催いたしました。

TALK EVENT

2024年9月17日は、SENQ霞が関(東京都千代田区)で開催。講師に、株式会社Panzon マーケティングプランナー・SHE Tokyoブランドディレクターの古端果林氏にお越しいただき、『強いプロダクト開発とD2Cのビジネスモデル』をテーマにお話しをいただきました。

イベントレポート

佐伯市出身の古端氏が手がける『SHE Tokyo』は、日本製のスカートに特化したブランド。大学卒業後、大手百貨店やSPA企業のデザイン研究所での経験をもとに、2017年に自社ブランドを立ち上げました。

「10年先、20年先の未来、自分が本当に良いと思うもの、信じられるものをつくり、届けたいという思いを実現するために起業を決意しました」という古端氏。

『出過ぎず、存在感のある佇まい』をブランドコンセプトに、日本製&メゾンクオリティのスカートブランドを立ち上げました。お客様はゼロからのスタート。そのため、古巣を含めた百貨店をメインに営業活動を行ない、クチコミで広がって徐々に取扱店が増えたそうです。

ブランドが周知されはじめてから、転換期となったのはコロナ禍でした。百貨店の休業により、納品がストップ。展示会なども軒並み中止になり、商品を手に取ってもらえる機会が減ってしまいました。WEB販売も行なっていましたが限界を感じていたところ、当時ではまだ少なかったインスタライブで情報を発信。「ずっと裏方の仕事だったので、表に出る抵抗感はありましたが…」と古端氏は当時を振り返りますが、撮影、出演、紹介も全て自分たちで手がけたことで、等身大で伝えるスタイルが「楽しくてついオーダーしてしまう」と大きな反響に。

「商品を手に取ってほしいお客様がまだまだいたんだと実感できました」(古端氏)

首都圏がメインだった商圏が、全国の人に知ってもらえるきっかけになり、知名度がさらに拡大。これを機に、卸売りを完全にストップし、100%直営に転換。2023年には、過去最高売上を更新したそうです。

D2C(Direct to Consumer)により、自社で企画から製造、販売まで一貫して届けるスタイルにしたのは、創業当初から変わらない「本当に求めている人に届けたい」という考え方を大切にしているからです。スカート専門店というニッチな事業だからこそ“数より質”を追求し、必要としているお客様へ届ける。そのためにメディア戦略も重視し、インパクトやビジュアルを大切にしながら、「日本製の、メゾンクオリティのスカートブランド」という点を前面に押し出していきました。

できることは自分たちで行ない、広告費を最小限に抑えることで、お客様へ還元するという考え方も変わらない姿勢です。また、情報収集が安易にできる今、協力をお願いしたい人にピンポイントでオファーできる時代背景を味方にして、「やれることはやってみる」と、コストをかけずにブランド力を上げるための挑戦を続けています。

「トライ&エラーの積み重ねでした」とこれまでを振り返る古端氏ですが、変わらない信念を持ち続け、その熱量をダイレクトに伝える手法を続けてきたからこそ今があるのだと感じます。

近年は、“スカートに合うトータルウェアが欲しい”という声も増え、アイテム数が増加中。また古端氏は、「日本は世界に誇る高い技術力がある」という思いから、日本発ブランドとして海外輸出も視野に入れています。

「いいものをつくっても、正確に、届けたい人に伝わらなければ意味がない」と古端氏は、苦戦が強いられた時期にも伝え方や独自性を大切にしてきたといいます。「ブランドは一日にしてならず。毎日の積み重ねによってつくられていきます」という言葉にもあるように、地道ながら着実に歩みを進めてきました。

「小さいブランドだからこそ、伝えたいことがシンプル。それが私たちの思いとしてしっかり発信できているのだと思います」(古端氏)。

いいものを、シンプルな言葉で、本当に届けたい人、本当にほしい人へ。作り手・売り手の両方の経験を持つ古端氏ならではの視点にくわえ、素直な思いとフットワークの軽さが、今日のブランド力につながっているように感じます。単に服を売るだけではなく、メイドインジャパンのすばらしさをも伝える役割を果たしている同社のビジネスモデルには、地方企業・次世代企業が飛躍するためのヒントがたくさんありそうです。

参加者との質疑応答の様子