2024年8月22日(木)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.9を開催いたしました。

TALK EVENT

2024年8月22日は、福岡市『福岡大名ガーデンシティ』内にある『GROWTH Ⅰ』を会場に開催。岡野バルブ製造株式会社代表取締役社長・岡野武治さんを講師にお招きし、『アトツギ企業が日本を変える』をテーマに、“アトツギ企業の可能性”、“アトツギ企業だからこそできる社会貢献とはなにか?”についてお話をいただきました。

イベントレポート

岡野バルブ製造株式会社は、1926年に前身の岡野商会を創業。発電用高温高圧バルブの初の国産化に成功しました。現在も原子力発電所や火力発電所などで使われるバルブを製造していて、これが製造できる会社は日本国内にわずか2社しかないそうです。

講演の冒頭、結論として「今後の日本においてアトツギの役割は重要」と断言した岡野社長。日本国内で、いわゆるアトツギ企業とされる同族企業は全体の90%以上、256万社以上だというデータがあるそうです。その多くを占めるのがSMB(Small and Medium Business)=中堅・中小企業で、SMBの中では同族企業の比率が高いことから、日本を支える企業の多くがSMBの同族企業、つまり“アトツギ企業”だといえます。

今後の日本において、アトツギ企業がカギを握ると考える理由として、「成熟かつ混迷した社会で、政治・行政・大企業ができることは限定的。思い切った変革や行動がしにくい社会だと思います」と岡野社長。中堅・中小企業の事業は、長く地域や業界に根差してきたものが多く、公共性も高い。そのうえで果敢な判断もできるフットワークの軽さも持ちあわせているため、社会の維持や変革のキーファクターになり得るといいます。地方に拠点を置くアトツギ企業も多く、ローカルなビジネスは公共性が高いことから、「アトツギと社会善の相性は良い」ととらえているそうです。

また、アトツギの特徴として「若年段階から社会還元モードに入れる可能性が高い」とご自身の経験も踏まえて話してくださった岡野社長。成長につれて自分の存在を定義し、自己実現のために社会的・経済的な活動を実践し、年齢を重ねてから社会還元へと考え方が変化していくのが多くの人の一般的なステップ。しかし、家業がある家に生まれたアトツギは、生まれながらに自分が定義されていることにくわえ、「家業を通じて地域、社会、経済、行政などと関わることが多かったので、当たり前のように社会のことを考える環境にあったんだと思います」(岡野社長)と、幼いころから広く社会と接し、社会を意識する機会が多かったそうです。そのため、若年段階から「社会還元モード」に入れる可能性が高いといいます。

しかし、社会還元にはある程度の規模感が求められ、挑戦するためにはそれなりの資金力も必要。家業の経済力と、若いうちから取り組める行動力も発揮できるアトツギこそが、社会を変革する存在になり得るととらえています。

アトツギたちは、後継者としての立場に向き合ったり、家業の存続に汲々としたりという人が多いのも現実だそうです。“アトツギが進むべきイメージ”として岡野社長がもっているのは、目先の利益を追求するだけではなく、社会貢献を中核に行動すること。「社会課題の解決こそが家業の発展につながります。自社だけではなく、大きなスケールで考える必要があります」(岡野社長)。

バルブ製造の事業を軸に、多彩な事業を展開しながら挑戦を続けている同社。その多くが地域貢献、社会貢献につながっているように感じられます。「アトツギ企業の多くは、お世話になってきた地域社会に対して恩返しをしたいと思っています」というように、地域や社会での存在意義をとらえながら、家業の発展・進化にチャレンジしています。「全てがうまくいったわけではありませんが、失敗の過程でも発見はあります」と、さらなる挑戦は続いています。

長寿企業であっても、社会情勢や自然災害など予期せぬ事態でなくなる可能性があるという危機感も持っていますが、「守るだけではなく、挑戦することが必要です」と岡野社長。何でも挑戦できる会社として環境を整えておきたいという考えを持ちつつ、“社会善につながるか”、“ビジネスとして持続できる仕組みづくりができるか”で判断をしているそうです。

地域に根差し、地域をよく知っているからこそ果たせる役割を。次世代へつなぐ財産を受け継ぐアトツギ企業の存在は、地域社会や日本経済を動かす大きな原動力としてますます期待される存在になっていきそうです。

参加者との質疑応答の様子