2024年7月16日(火)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.8を開催いたしました。
TALK EVENT
2024年7月16日に開催された第8回目は、株式会社ヤマナミ麺芸社代表取締役・吉岩拓弥氏にご登壇いただき、『ヤマナミ麺芸社のこれまでとこれから』をテーマにお話いただきました。
イベントレポート
2004年に父親からラーメン店を受け継ぎ、現在は7業態・30店舗を展開。「店舗展開というよりは、いろんな地域に多彩なラーメン店をオープンすることで、地域の人に楽しんでもらいたい」と地域貢献への強い思いを持つ吉岩さん。豚骨、味噌、醤油など、さまざまな味で大分県民に親しまれるラーメン店を展開しています。
創業から変わらない“お客様を喜ばせたい”という考えから、2006年に製麺事業をスタート。ラーメン店と製麺業との融合によって、麺産業を支える食品メーカーになることを目標に掲げています。当初は、多彩なラーメン店を展開する自社のための製麺でしたが、その名は業界内で広がり、BtoBの依頼が増加。「ラーメン店を運営しているからこそ、現場の気持ちがわかるのが強みです」と、細かな要望に応えながら、作り手の思いやこだわりを実現する、高品質な商品づくりをおこなっています。他社からの声は、自分たちの気づきにもつながっているそうです。
また、M&Aによって、生鮮加工会社、辛子高菜の製造メーカー、冷凍・半生麺の製造加工会社の事業を継承。『食の九州に貢献できる会社に』という思いを、多彩な事業展開で実現しています。
事業拡大によって生じたのが、すぐれた人材の確保と育成の必要性。“人の特性を重視したキャリアパス”を実現するための取り組みのひとつが、業務のDX化です。当初は「ラーメン店にDXが必要なのだろうか?」と吉岩さんご自身も疑問があったそうですが、バックヤード業務をメインにIoTを取り入れ、業務の無駄を表面化。改善点を明確にすることで働き方改革と顧客満足度アップの両立に成功した好例は、食品関連では九州初となるDX認定を取得しました。人材育成・確保の観点からも、DX化によって若手やパートさんなど経験値に関わらず作業の効率化を図ることができるようになったり、無駄な残業がなくなったりなど、多くのメリットがあるそうです。
吉岩さんが捉えるDX化の目的とは、『デジタル技術で、仕事のやり方・働き方を変えて、利益の最大化に取り組むこと』と話します。
利益を上げるためには、
①客単価アップ ②客数アップ ③原価を下げて粗利を増やす ④固定費を下げる
この4つを考える必要があります。そのために物的環境整備や情報収集を徹底しDXをかけあわせることで、社員の働く環境も改善され、意識改革にもつながっているといいます。
『成果が出なくても人のせいにしない。人ではなくシステム(コト)に問題がある』。DX化によって、社員も、会社も、取引先も、関わる全ての人が良くなる仕組みの確立を成功させた同社。現在は同業他社を中心にDX化や人材育成に関する研修なども受け入れているそうで、業界全体の活性化に積極的です。「麺を通じて、どんな時代にも生き残る適応能力の高い会社づくりをしていきたい」(吉岩さん)と、改革はまだまだ続きそうです。
クロストークでは、「自社のノウハウを他社に教授することに抵抗はないのか」という質問に対し、「業界人から勉強したいと言われる会社を目指しています。情報をオープンにして、プロ中のプロになりたいんです」と吉岩さんは、簡単にマネされるものはノウハウではないともいいます。ますます人口減少の加速が予想される中、ラーメン業界、飲食業界が一緒になって活性化していくべきだと捉えているそうです。
参加者からの質問「DXなど新しいことを取り入れようとするとき、社員たちを動かすために実践したこととは?」に対しては、「小さな成功体験をたくさん積んでもらうことを意識しました」と吉岩さん。レジ周りを整頓することでレジ業務の時間を短縮したり、調理道具を置く位置を変えて作業効率を上げたりと、いつもの業務を少し工夫するだけで効率化が図れるんだという実体験により、現場スタッフの意識が自然と変化したそうです。
細分化された膨大なデータは、単体ではもちろん、かけ合わせることで新たなデータとなり、課題の見える化を実現しています。『業務のDX化』と聞くと「まだ必要ない」「ハードルが高い」と感じる経営者も多いかもしれませんが、まずは身近なツールを活用しながら小さな業務をデジタル化してみるのも、DXへの第一歩といえそうです。