2024年6月18日(火)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.7を開催いたしました。

TALK EVENT

今年度初回の講演は、株式会社JEPLAN取締役・執行役員会長・岩元美智彦氏にご登壇いただき、『みんな参加型の循環型社会』をテーマにお話いただきました。

イベントレポート

資源リサイクル事業などを手がける株式会社JEPLANの企業理念は、「あらゆるものを循環させる」。独自のPETケミカルリサイクル技術を使ったモノづくりのほか、他業種と連携して“サスティナブルな社会づくり”に取り組んでいます。

岩元さんとともに、現代表取締役・執行役員社長の髙尾正樹さんの2人で創業した『株式会社JEPLAN』。資本金わずか120万円からスタートした同社は、今や世界が注目する企業として成長しています。設立当初に掲げた目標は、『経済と環境と平和の並立』だったそうです。たった2人のベンチャー企業に何ができるのか…と周囲の不安を払拭するように、ハーバードビジネススクールで講師をした経験をきっかけに、2015年にはアショカ・フェローに選出。さらに、日経ビジネス「次代を創る100人」に選出されてから講演依頼が100倍に増え、フォーブスの表紙を飾ったり、教科書に採用されたりなど、世界中で幅広く活躍されています。

循環型社会の主役は「みんな」だと定義する岩元さんは、「みんなが中心、みんなが感じる、みんなが参加型であることが大切」と話します。守備範囲の広い循環型社会を実現するためにはまず、“みんな=消費者”が自分事として参加する仕組みづくりが必要だととらえています。

これを実践するために循環のトライアングルを掲げ、“世界にはゴミが存在しない”ことを証明するべく、従来の「あるものをどうリサイクルするか」ではなく、「リサイクルできるもので製品をつくる」という仕組みを確立。それを実現した考え方が、「科学的(ケミカル)リサイクルなら無限にリサイクルが可能」ということです。物質を元素や分子レベルでとらえるというこれまでにない発想により、物理的リサイクルから化学的リサイクルへと変換する技術を開発。例えば、衣服に含まれるポリエステルを、もう一度ポリエステルの原料に再生することを可能にしました。1回、2回だけの限られたリサイクルではなく、半永久的にリサイクルする技術は、世界中の投資家からも注目を集めています。

消費者の当事者意識を高めるために行なっているのが、回収BOXの設置です。「消費者行動を変えるのには時間がかかります。回収BOXに持っていくという経験が日常になれば、リサイクルが自分事になります」と岩元さん。これまでの『買う→使う→捨てる』から、『リサイクル→買う→使う』へと消費行動の変化がはじまっているといいます。回収ボックスは大手メーカーや行政機関、学校などが回収拠点となり、世界最大のプラットフォームとして拡大中。さらに、回収品の分別は、全国約3000ヵ所の障がい者就労施設へ依頼。SDGsが掲げる目標のひとつ『誰一人取り残さない』を実現しています。

また、大手ファストフード店におもちゃの回収ボックスを設置したり、ワークショップを開催したりと、子どもの頃から「リサイクルって楽しい」という意識を高める活動も実践。当初300人だったファストフード店のイベント参加者は、今や世界350万人もの子どもたちが参加する規模にまで拡大していて、「意識の高さに世界中が驚いています。日本の子どもたちのおかげで、行動変容が文化へと変わりつつあります」(岩元さん)と、取り組みは着実に根付きはじめています。

「日本に唯一ないのは資源だけ。しかしテクノロジーの力で資源はコントロールできるんです」と岩本さんは、テクノロジーを持って循環型社会を実践すべきと話します。目指すのは、同社が20年前に掲げた地球目線の『三方よし』を実現すること。地上製品を使った製品を買うほどに経済が周り(経済によし)、CO2削減(環境によし)、戦争やテロをなくす(平和によし)。循環型社会がもたらす可能性は、世界が目指す理想を現実にします。

今回のお話で印象的だったのは、巻き込み力の大切さ。他業種の人や技術、消費者、地域、子どもたちと、たくさんの人を巻き込むことで、リサイクルという世界全体の課題を解決へと導いています。「以前は“この素材はリサイクルできますか?”という質問から、“リサイクルできる素材は何ですか?”と、メーカー側の意識も変化しています」(岩元さん)と、環境やリサイクルといったキーワードを自分事にしたいと取り組んできた同社の活動が、社会全体の意識の高まりをもたらしていることは間違いありません。

「事業をHUBにすることが重要」と岩元さんがいうように、信念を軸にしながら自然と周りが巻き込まれるような仕組みをつくることで、たとえ小さな企業でも大きな旋風を巻き起こせるはずです。

参加者との質疑応答の様子