2023年12月15日(金)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.3を開催いたしました。

TALK EVENT

3回目となる今回は、東京都のSENQ霞が関を会場に、経済産業省地球環境対策室室長・高濱航さんにご登壇いただきました。「国目線で見る日本や世界の環境に関する課題・解決策」をテーマに、大分の地方企業ができることを考えました。

イベントレポート

大分市出身の高濱さんは、2002年に経済産業省に入省。2018年から2022年は大分県商工労働観光部長として、原子力安全、ODA、半導体などの事業を担当。2022年7月に経済産業省地球環境対策室長に着任されました。

地球環境対策室では『今を守る、地球へつなぐ。地球室』をキャッチフレーズに、地球の“今”をとらえながら、“未来”を守るためのさまざまな取り組みを実践。CO2削減、地球温暖化防止など世界規模の課題解決に向けて、日本の取り組みを海外へ発信する役割も担っています。

印象的だったのが、「CO2削減を単なる会社のCSR的なものとしてだけでなく、活動に対する価値を見出したいという」高濱さんの言葉です。「同じ製造物でも製造の工程はさまざま。そこが企業価値につながる仕組みづくりをしたいです」と、経済産業省としても地方企業の環境に対する取り組みに目を向けています。『イノベーションを通じた企業の課題解決力を企業価値へとつなぐこと』が、今後の環境問題解決のひとつとして注目されそうです。

現在、高濱さんが関わっている事業のひとつとして、2023年1月に日本とUAEの政府間で設立された、日本各地のスタートアップ企業とUAEの投資家などをつなぐ『日UAE先端技術調整スキーム(JU-CAT)』があります。「地方のスタートアップが、東京を介さずに直接世界とつながれるチャンスは十分にあります」と高濱さんが話すとおり、“地方”であることはもはやデメリットではありません。「大分県にはバランスよく産業があり、アジアの拠点として成長が期待できる宇宙港の存在も大きい」と、宇宙港の誕生は、新たな産業を生むきっかけにもつながるのではないかと期待しています。

環境課題の観点からは、CO2削減の貢献率を示す『削減貢献量』を推進。すでにEUでスタートしている取り組みで、サプライチェーン(製造工程)までさかのぼってCO2排出量が問われる時代になるのもそう遅くないといいます。そのときに必要なのが、企業が目指す姿から考える『デザインシンキング』だといいます。

高濱さんが大分県に在籍していた時代はコロナ禍。時短給付金の事業に携わったことをきっかけに、より県民の視点にたったシステムづくりを推進する必要性を感じたそうです。「DX推進を考えるとき、どうしてもデジタルツールから考えてしまいますが、まずは県民の意見にしっかりと耳を傾け、“何が必要とされているのか”から考えました」。デザインシンキングによって描いた理想を実現するためのツールづくりは、ITの専門家などプロとの連携によって可能に。官民連携の必要性を実感したことから、「行政が敷居を高くしてしまっているのかもしれませんが、企業のみなさんも積極的に行政を活用してほしい。自分で調べるだけではなく、誰かに頼ることでつながりが生まれ、新たな展開も見えてきます」と、行政、企業、大学など専門家同士が上手に関わることが、地域のIT推進にもつながるのではないかといいます。

大分県から優秀な人材や企業が流出する現実も感じていたという高濱さんは、大分県への就職や移住を促進し、つながりをつくるきっかけとなる拠点として、福岡市大名のカフェコミュニティスペース『dot.(ドット)』の開設にも携わりました。起業のヒントを得たり、協働のきっかけが生まれたりと、さまざまな人との出会いを創造する場として活用されています。

「ローカルだからこそ見える課題感は、日本・世界でも需要があるはずです。今や地方と東京の差はありません。“地方だからできない”、ではなく“大分だったらあれができる、これもできる”とポジティブな思考に変えて物事をとらえてほしいです」と、大分の強みや価値を高く評価。日本、世界、宇宙と、より広い視点を持ちながら、“大分だからこそできること”をとらえた事業の展開に期待を寄せています。

参加者との質疑応答の様子