2026年2月26日(木)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.25を開催いたしました。

TALK EVENT

日本の建築の平均寿命は約30年と短く、多くの建物が価値を失い、建て替えか廃墟化という選択を迫られています。これまでの「壊す・更新する」という文化は、資材高騰や環境問題が深刻化する現代において、大きな転換期を迎えているのではないでしょうか。

今回のイベントは、株式会社再生建築研究所 代表取締役の神本 豊秋氏が登壇。「再生建築研究所が挑む『サイセイ』。建物とともに、時間と価値を未来へつなぐ新たな価値観とは」をテーマに、既存の建物の基礎を活かしながら新たな価値を引き出す「再生建築」の考え方についてお話しいただきました。自身のキャリアの原点から、建築を100年持続させるための技術、そして地元・大分で実際に手がけているプロジェクトまで、ビジネスと地域づくりの視点を交えてお話しいただきました。

イベントレポート

「誤読」を原動力に、独自の道を切り拓く

冒頭、神本氏は、自身のキャリアを語る上でのキーワードとして「誤読」という言葉を挙げました。

神本氏が建築を志した原点は、小学生の頃。祖母の家を建てた叔父の姿を見て「建築家」になると決意しましたが、叔父は施工店の経営者。一般的に「建築家」と言われるものではなかった。しかしながら、この「誤読」から始まったキャリアが独自の展開を見せます。勧められた進路が一般的な王道ルートとは異なっても、そこで実直に実務を積んだことが、のちに東京で独自の道を切り拓く「再生建築」の土台となりました。過去の選択をポジティブに読み替え、自らの強みに変えてきた経験こそが、現在の活動の原点となっています。

「壊す」から「活かす」のが当たり前の文化へ

中盤、神本氏は日本の建築業界が抱える構造的な問題点に触れました。現在の日本の仕組みは、新築を作ることで経済を回してきた高度経済成長期のモデルに基づいています。そのため、どんなに手入れされた建物でも築40年を過ぎれば資産価値がゼロと見なされ、銀行融資も得られにくくなることから、結果として「取り壊して新築を建てる」という循環が繰り返されています。

日本でSDGsが叫ばれているなか、欧米では建築寿命が100年を超えて延びる一方で、いまだに30年が建築の寿命とされる日本の現状を神本氏は課題として捉えられています。 

神本氏が提唱する「再生建築」は、単なる内装改修(リノベーション)とは一線を画します。建物の歴史を継承しながら、耐震性や断熱性を新築以上に高め、建物本来の価値を生まれ変わらせることで未来へと繋いでいく。 「壊すのが当たり前」から「活かすのが当たり前」の文化へ。神本氏は、再生建築という言葉を世界へ発信し、業界の仕組みそのものを変革することを目指しています。

その可能性は、具体的な数字にも表れています。再生建築は新築に比べ、コストや工期を半分以下に抑えられるだけでなく、建設時のCO2排出量や廃棄物量を80%以上削減できるケースもあるなど、地球環境への貢献を果たします。

代表作の一つである表参道の「表参道ミナガワビレッジ(https://saiseikenchiku.co.jp/works/minagawa-village/)」は、築60年超の違法状態にあった建築を再生した複合施設です。取り壊して新築する以外の選択肢がなかった状況に対し、家主が大切にしてきた場所の思い出や文化的な価値を丁寧に引き継ぎながら、現代の基準に適合させて生まれ変わらせました。

また、群馬県みなかみ町では廃墟化した施設(https://saiseikenchiku.co.jp/works/6151/)を産官学金の連携で再生し、国の新たな補助金制度の創設へと繋げています。各地の建築家や金融機関とノウハウを共有することで、古い建物に正当な投資が行われる社会システムを構築しようとしています。

故郷・大分でのプロジェクトと今後の展望

後半は、神本氏の故郷・大分での取り組みについてお話しされました。別府駅前にあるホテル「アマネク別府ゆらり(https://saiseikenchiku.co.jp/works/amanek-beppu-yurari/)」は、新築の本館と隣接するビジネスホテルの再生や周辺の商店街までを含めた、街全体の活性化を目指したプロジェクトです。

本館は、将来の用途変更も見据えた自由度の高い構造とし、敷地内には駅や公園、周辺施設を繋ぐような通り道を設けています。南側に緑豊かな空間を配し、宿泊客だけでなく誰もがふらりと立ち寄れる「街に開かれた佇まい」をつくる。街とのつながりを意識したこのプロジェクトは、地域全体の価値を高める再生建築のひとつの形を示しています。

「大分には面白いことをしたい人が多く、郷土愛も強い。その文化を絶やさずに紡いでいくことが大切」と語る神本氏。大分という土壌にある情熱を形にしていくその挑戦は、参加者それぞれが自身の事業や地域活動の可能性を再発見するきっかけとなっていました。

参加者との質疑応答の様子