2024年1月26日(金)にConnect for oita ventures 交流会イベントVol.4を開催いたしました。
TALK&DISCUSSION
第4回目は、株式会社クアンド代表取締役CEO・下岡純一郎さんにご登壇いただきました。今回はディスカッションをメインにより活発な意見交換の場とするために、限定20名の完全招待制(抽選方式)で開催しました。
イベントレポート
株式会社クアンドは、本社の北九州を拠点に事業を展開しています。北九州は鉄鋼業をはじめとする製造業が盛んで、日本有数の工業地帯として発展を続けてきました。しかし、時代の流れによって地域産業が衰退するのと同時に、人口減少や少子高齢化も加速していきました。
地域産業の一翼を担う建設会社の長男として生まれた下岡社長は、「幼少期は地元にネガティブな印象を持っていました」と、少子高齢化や衰退していく地域を目の当たりにしてきたそうです。“外の世界”を知るために、大学時代にアメリカへ留学している時期に研修でシリコンバレーを訪れたことをきっかけに、「地域産業・レガシー産業をアップデートして循環させること」に興味を持ったといいます。
2017年の創業当初は、地元メーカーからのDX受託やコンサルをメインに事業を軌道に乗せました。同社が開発した遠隔支援コミュニケーションツール『SynQ Remote(シンクリモート)』は、製造・建設・インフラなどの現場と管理者をつなぐ遠隔支援コミュニケーションツールです。業界における人材不足の課題解決に貢献しながら、伝統技術の蓄積にも役立つツールとして高い評価を受けています。「今あるものをいかして文化にしていく」という海外の考えと、日本の産業ならではの現場力を両立させることで、地域産業のアップデートをはかりながら、次世代へとつないでいくことが狙いです。
「地域の課題は、いずれ世界の課題になっていくでしょう。地域だからこそ生まれた産業を、時代に合わせて進化させていくことが必要です」と下岡社長。単なるDX化ではなく、雇用創出、消費拡大、教育水準の向上と、地域産業のアップデートは地域活性化にも影響を与えそうです。
参加者からも活発な意見や感想が寄せられました。その一部をご紹介します。
参加者:「地方産業を担う企業には人材が集まってこないという現実があります。建設などの産業に優秀な人材が興味を持つきっかけとは?」
下岡社長:「これまではいかに労働力を安くおさえるかという考え方でしたが、それでは集まりません。賃金を上げる必要がありますが、そのためには利益が出る構造によって、いかに儲かる会社をつくるかが重要です」
参加者:「SynQ Remoteを開発するうえで意識したポイントは?」
下岡社長:「ペルソナの年齢層を高めに設定し、業界初心者や高齢者でも使いやすいシンプルな設計を心がけました。ITはよくわからないという人でも、一度使ってみれば案外大丈夫だと思ってもらえるように工夫しました。」
参加者:「レガシー企業だからこそ昔ながらの考えが強く、新技術の導入が難しい…」
下岡社長:「DXはテクノロジーが目立ちがちなので、年配の世代を説得するのは難しいのかもしれません。機能やプロダクトからではなく、導入することによってどんな価値が生まれるのかを説明するといいかもしれません。事業継承のタイミングでDXを推進する企業も増えてきています。」
参加者:「今後の展開は?」
下岡社長:「日本産業の価値は、モノの品質はもちろん、現場のナレッジ(知識)や、それを持つ技術者の存在。場所や空間の制約がなくなれば、例えば日本人の高度な技術を使って遠隔で海外の現場を管理することも可能になります。そうなれば拠点を置く場所は関係なく、ローカルでも儲かる仕組みが構築できるはずです。」
「DX化による地域産業・レガシー産業のアップデートには、パーパス(企業の社会的存在価値)を見直すことによって、眠れる力を進化の力に変えていくことができます」という下岡社長の言葉が印象的でした。人口減少や少子高齢化の解決策を見出すことは安易ではないからこそ、今あるものに改めて価値を見出し、新たな産業へと発展させていくことが、これからの社会に必要とされる企業力となりそうです。
地域の発展に貢献してきた産業を未来へとつないでいくためにも、地域や社会の課題を自社の課題ととらえながら進化していくことが大切なのかもしれません。